
「螺鈿箱」のきらめきを、
革工芸の印伝で表現する。

螺鈿箱(らでんのはこ)[中倉 88]
「螺鈿箱」のきらめきを、
革工芸の印伝で表現する。
印伝の源流にある天平文化の匠の技に敬意をこめて、正倉院の宝物から着想を得た印伝をつくる。
昨年より始まったプロジェクトの第2弾となる今年度は、夜光貝で華麗な花文が装飾された「螺鈿箱」の文様を使った印伝に挑みました。見る角度によって虹色の色合いと輝きが変化する螺鈿を革工芸である甲州印伝の技法でいかに表現するか。
一見難しいと思われたからこそ、あえてその壁に挑んでみようと企画・デザインのスタッフと伝統工芸士の職人で構成するプロジェクトチームで決断。肝となる色彩構成と更紗の顔料づくりに試行錯誤を重ね、およそ半年をかけて完成させました。
螺鈿箱(らでんのはこ)
宝石で飾った革帯「紺玉帯」を納めるための箱で、木胎黒漆塗りの漆器に螺鈿や水晶で鳥や花の文様が施されています。日本において黒漆塗りと螺鈿技法を用いた最古級のもので、さらに文様に切り抜いた金を漆塗で定着させる金平脱が使われています。当時の漆工の技と美を今に伝える貴重な宝物です。
更紗・漆
SARASA / URUSHI





理想の色彩へ導いたのは
パール顔料の光。
「螺鈿箱」の文様を印伝にあらわす─
課題は見る角度によって一枚一枚の花弁の色彩が虹のように見える螺細の特徴をいかに表現するか。更紗の職人・戸澤武士に求められたのは、均一に見えない複雑な色合いを、2色の更紗の顔料でつくりだすことでした。
「まずは螺鈿らしい色彩の軸となる一斤染(ピンクオレンジ系)と白群(ブルーグリーン系)の色に見えるような顔料をそれぞれ調合し、何種類ものパターンを鹿革に置いていきました。目指す色が台上でつくれたとしても、実際に革に乗せてみないと具合はわからないんです。しかも塗った直後は判別できず、一日おいて乾かしてみないと本当の色は見えてきません。これが2色ありますから、組み合わせによっても微妙に印象が違って見えますし、 顔料の試作にはかなり時間がかかりました」

当初は、顔料特有の質感によって色の主張が強すぎ、なかなか螺鈿のように見えなかったといいます。
「色合いを薄めたりしてもマットな印象が拭えなくて。そこでそれぞれの顔料に普段は使用しない微細なパールの顔料を混ぜてみました。すると色彩に光の反射が生まれ、いい意味で色がぼやけてくるんです。色味を曖昧にしつつ、夜光貝のようなきらめきも出てくる。この線ならいけそうだと思いました」
こうして2色の顔料の濃さと加えるパール顔料の加減をいくつも試し、ようやく螺鈿のイメージに近い色合いを出すことができました。この一斤染と白群の顔料に加え、仕上げは3つ目の色、白漆。漆付けすることで花文に立体感が生まれるほか、漆特有の艶が螺鈿らしいきらめきとなりました。
*写真の茶色に見える部分が白漆です。白漆は漆付けした当初は茶色に見えますが、時とともに白さが増していきます。
*鹿革の色は紫色です。
燻
FUSUBE





燻の薫りの中に、
天平の美を
感じていただけたら。
正倉院のいくつかの宝物は、燻しによる加工や着色がなされていたと考えられています。この度、「螺鈿箱」をつくり出した奈良時代の匠への敬意を込めて、印傳屋に受け継がれる燻の技法による印伝も製作しました。
燻の工程は、まず焼き擦りをした鹿革に模様の部分を糊で防染します。これをタイコに貼り付け、稲藁の煙をあてて燻していきます。この技ができるのは、印傳屋でただ一人の燻職人・神宮寺秀哉。竈から上る煙の出具合を見ながらタイコを回転させ、左右に移動させながら革にまんべんなく煙をあてていく。長年養われた感覚でこれを繰り返すこと一日半。さらに一日寝かせたあとは仕上げの糊掻き。防染した糊をヘラで掻くと、白い模様が浮かび上がります。
「奈良時代のデザインを、現代に受け継がれた技を使って表現する。これが1300年の時をこえた匠へのオマージュになれたらと思い、一つひとつ心をこめました。そして願わくば、この燻の印伝を手にされた方が、燻された薫りの中に天平の美を感じていただけたらと思っています」
印傳屋「第77回 正倉院展」
協賛記念プロジェクト2025
企画から製造に関わった
メンバーへのインタビュー
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印傳屋「第77回正倉院展」
協賛記念プロジェクト 2025
− 正倉院展コレクション −

No.50606 正倉院展
丸型コインパース[更紗/螺鈿箱模様]
10月24日発売 限定95個 ※25年製造分
サイズ:8×8×1.3cm
重量:25g
機能外側:口前はファスナー式/チェーン付き
6,270円(税込)

No.50607 正倉院展
名刺入B[更紗/螺鈿箱模様]
10月24日発売 限定139個 ※25年製造分
サイズ:7.5×11.2×1.5cm
重量:34g
機能内側:名刺ポケット×1/ポケット×2/脇と底にマチ付き
15,950円(税込)

No.50608 正倉院展
合切袋中マチ付[更紗/螺鈿箱模様]
10月24日発売 限定124個 ※25年製造分
サイズ:17.5×18×7cm
重量:97g
機能外側:底マチ付き
機能内側:内ポケット無し
24,200円(税込)

No.50609 正倉院展
ブックカバー[更紗/螺鈿箱模様]
10月24日発売 限定94個 ※25年製造分
サイズ:16.4×24.5×0.2cm(横幅は開いた状態)
重量:52g
機能内側:文庫本(高さ~150mm、厚さ~18mm)に適応/両方に本の端を差し込んで使用/ポケット×1/同柄の栞付き
19,800円(税込)

No.50611 正倉院展
合切大マチ付[燻/螺鈿箱模様]
10月24日発売 限定45個 ※25年製造分
サイズ:26.5×19×5cm
重量:132g
機能外側:底マチ付き
82,500円(税込)
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